私は学生時代から20代の前半まで、いわゆる「ギャル」と呼ばれるジャンルの女でした。流行のものがあればすぐに検索をかけて調べ、デパートに行っては購入し、友人たちとかわいいとか、ダサいとか、いろいろとぺちゃくちゃ喋って遊んで過ごしていた、教養とは、まったく無縁の人です。(笑)
そんな時に、私のアルバイト先であったハンバーガーのお店に、本社から社員の方が派遣されて来たのです。若者の乗りで仕事をしていた私たちは説教されるような形になり、最初は不満ばかり漏らしていました。しかし、その社員の方も人にやらせるばかりではなく、実際に自分でも一生懸命に働いていて、私はその姿に徐々に心を奪われていきました。真面目に黙々と仕事に打ち込むってかっこいいなと思うようになったのです。
私は思い切って自分の気持ちを打ち明けました。彼は社員とアルバイトの関係で恋人になるのはまずいという理由で、最初は断ってきました。ですので、私はハンバーガー店のアルバイトを辞めたのです。まだその時点では彼とは友人の関係でしたが、デートには連れて行ってくれ、映画を見る事が多かったと思います。
私が着付け教室に通うことになったきっかけは、そんな彼と観に行った時代劇の映画(今時の役者さんの方ですよ)です。私ひとりでは絶対に観に行こうとしないジャンルの映画でした。しかし、スクリーンに映った侍の奥方の高潔な感じや、姫君の高貴な感じや、女性らしい美しい所作に私は目を奪われたのです。凛とした立ち居振る舞いもそうですし、もう、着物姿の女性全てがすごく美しく感じる様になりました。
日本の伝統的な女の姿というのに憧れるようになり、街で見かける着物姿の女性の美しい所作等を目で追いかけるようになり、品なく過ごしていた若い頃が恥ずかしくなってしまいました。せめて着物を着られるようになりたいと思い、通うことに決心したのです。
実際に教室で習うことは新鮮な知識ばかりでした。若い頃、服といえばできるだけラフな格好で、頭から被ればそれで終わりのようなTシャツばかりを着ていたので、その奥深さに驚きました。実際に着付けをやらなくても、この知識を学ぶだけでも大変勉強になると思います。着物というのは帯や足袋などの、一般の人がすぐに思い浮かべられるものだけでなく、裾廻しや衽など、勉強しなければわからない用語や箇所がたくさんあります。それらは無意味に名称がつけられているわけではなく、女性としての美しさを強調するために、綿密で繊細な理由がきちんとあって、とても論理的な構造になっているのです。
昔の人の知恵と技術が詰まっていることを学ぶことができ、これらは学校では決して習うことのないおススメの教養だと思います。
ひとつひとつの箇所の着付けのやり方は、インターネットにも乗っていますが、それらの情報はとても断片的です。教室に通ってみると、正しい順序で行うことがいかに大切なのかを思い知ることになります。着物を着ている女性を見て、インターネットの情報のみに頼って見よう見まねでやっていた場合、それがすぐに分かるようになりました。若い頃に使っていた言葉で言うならば、それはダサいです。
着物は洋服と違って、着ればそれで終わりではありません。大和撫子の魅力は全身から放たれるオーラであり、自分自身の所作や姿勢と、着物の繊細な美しさがマッチして、初めて成り立ちます。彼氏に喜んでほしい私は、積極的に日本人女性としてふさわしい振る舞いというのを学びました。
彼からも、ひとつひとつの動作が優雅になって、アルバイトで働いていたときに比べると別人のようだと言ってもらえました。私は今、将来的には着付け教室を自分で開けたらいいなと思っています。教室に通うことでたくさんの情報を学ぶことができます。
夢ができたのも嬉しいのですが、何よりも嬉しかったのは、彼のご両親に「上品な娘さん」と言われ気に入られたことですね。『着物を着る事』が出来る(勿論、所作等含めて)事が、半年後に結婚する事が出来たり、普通の生活でも非常に役に立っていることです。
着付け教室に通うことで、私の人生は180度変わりました。本当に良かったと思っています。